下條 信輔「視覚の冒険―イリュージョンから認知科学へ」☆☆☆☆

視覚の冒険―イリュージョンから認知科学へ

視覚の冒険―イリュージョンから認知科学へ

人間の視覚が進化の産物であることを身をもって知ることができる「体験する科学書」。
これは錯視をテーマにした本である。


たとえば、私たちは白い柱の奥に潜む黒い獣を見抜くことはできても、柱の手前に置かれた黒い物体は理解できない。
あなたは、この言葉の意味が分かるだろうか?
分からないであろう。それはあなたのせいではなく、私のせいである。
私にはこれを言葉でうまく説明できない。


だがステレオグラムを用いることで、この本は上の言葉の意味を視覚的に強制的に理解させてくれる。
目とは生き残る為に見えないといけないものを見る為だけに特化させた器官だ。
この本を読むと、自分の視覚が何と優れた、しかし偏った機能しか持っていないのかと驚かされる。


この視覚の極めて限定的に突出した能力への理解は芸術への応用もできそうである。