2006-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「社会生物学論争史」

これは「社会生物学」にまつわる論争を追いかけた本である。 しかし本書はそれだけについての本ではない。 「科学とは何か?」 「自分の知る科学が別の人間にとっての科学とはまるで異なるとき、一体どんな論争が起きるのか?」 「実験科学者とナチュラリス…

冲方丁「マルドゥック・ヴェロシティ」

マルドゥック・スクランブルの前日潭。 前作の強大な敵ボイルドが主人公で、彼がフォースの暗黒面に落ちるまでの物語。 二巻まで読んだが、三巻はほとんどの登場人物が死ぬハードな展開が予想される。 前作の主人公の兄と思われる人物が出てきたり、 後にウ…

ブローデル「物質文明・経済・資本主義」14-19世紀までの世界の人口(旧玄文講再録)

現在、地球の人口は64億6400万人だとされている。 インドには人としてカウントされない統計外の低カースト層の人間がいて、実は彼らを含めるとインド人の人口は既に中国を越しているのではないかとも言われている。 インドに限らず戸籍に登録されない…

川勝義雄「中国の歴史3 魏晋南北朝」

戦争が終わらない世界。 それは生まれる前からあり、死んだ後にも続き、 祖父の祖父の代から孫の孫の代まで繰り返される。 そんな時代に生まれてしまった者たちはどうやって生きていけばいいのだろうか。 魏晋南北朝時代とはそんな時代であった。 それは西暦…

清水美和「中国農民の反乱」(旧玄文講再録)

中国が抱える問題の中に「三農問題」と「貧富の格差」がある。 この2つは似たような問題であり、その問題点とは農民の収入がまるで上がらず、沿岸部の工業地域が豊かになる一方で農民は日々ひたすら貧しくなっているということである。 この事情を知りたく…

貿易その2「歴史に見る国際競争力主義者の行動」(参考文献:野口旭「経済対立は誰が起こすのか」)

戦略的貿易論。 それは「貿易黒字は善で貿易赤字は悪である」と考える人々が作り出した政策のことである。 90年代の日本は巨額の貿易黒字を抱えていた。 それは不況のせいで国内の消費が停滞し、余った資産が投資として海外に流れた結果にすぎなかった。 …

貿易その1「国際競争力の幻想」

経済政策において、貿易は実は最重要問題ではない。 もちろん貿易は重要ではあるが、どこかのエコノミストように 「日本人は創意工夫して、国際競争力に打ち勝っていかなければならない」 と拳を振り上げるような大げさな問題ではない。 アメリカや日本など…

経済成長は幸福への最短経路であること(旧玄文講再録)

経済において重要な概念は「生産」である。 なぜなら生産性を高めることが国力の増大と国民の福祉に直接つながるからであり、一国の経済力、進歩、生活水準の豊かさは生産力によって測られるからである。 つまり生産性が高まれば景気が良くなり、人々が豊か…

科学とは何か(2)経済学(旧玄文講再録)

以前、私がまだ学生だった頃、研究室の同僚と経済政策について話しているうちに、彼らは 「経済学なんてつまらないよね」 「ノーベル経済学賞なんて要らないものだ」 なんて言い出したことがある。 そして挙げ句には 「世界で一番、純利益を多く出した経営者…

科学とは何か(1)総論(旧玄文講再録)

科学というのは何だろうか?客観的な事実の集合だろうか。世界で起きている現象を明快に説明してくれる百科事典だろうか。 私が思うに、科学とは『結果そのもの』のことではなく『結果に至る手段』の名前である。 科学とは真理ではなく、真理を求める人間の…

玖保キリコ「バケツでごはん」(全8巻)

バケツでごはん (8) (Big spirits comics special)作者: 玖保キリコ出版社/メーカー: 小学館発売日: 1996/10メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (2件) を見る実は動物たちは言葉がしゃべれて、人間たちと同じように暮らしている世界。 そし…

上野顕太郎「帽子男は眠れない」

五万人の群衆を見開き2ページに描いたりと、報酬と労働量の比が不釣り合いなギャグマンガばかりを描くので有名な上野氏初期の作品。 最近「夜は千の眼を持つ」を購入し、それが面白かったので氏の他の本も集めている。 感動や感傷に背を向けて、下らないギ…

宮崎市定「雍正帝(ようせいてい)」

雍正帝は最良の独裁政治を行い、それゆえに独裁政治の限界を示すことになった中国清王朝の皇帝である。 彼は皇太子たちとの政権闘争の果て1722年に皇帝になると、反目する兄弟に「豚」と「犬」という名を与えて独裁君主となった。 そしてこれより彼の手…

ウィグナーの定理(未完・証明に不備あり)

以下ではこのウィグナーの定理を証明する。 ウィグナーの定理の証明は、確率の不変性(¥ref{=prob})を指導原理として行われる。証明の手順は以下の通りである。まず対称性変換後の状態ベクトルが完全正規直交系であることを確かめる。そしてそれらの積の虚部…

数式を多用した一部の記録はLaTexで変換しないとまるで意味不明なものになっています。 LaTexは無料でダウンロードできます。検索すれば詳細な手引きが山ほど出てきますので、そちらをご参照ください。 人によって自分だけの数式の定義や書式を持っているも…

貨幣その4「その因果」(旧玄文講再録)

どうやら市場における貨幣の影響について二つの異なる意見が存在するようである。 それはケイジアンとマネタリストである。 前者は政府や中央銀行は金融政策を通して市場に介入するべきだと考え、 後者は金融政策は景気回復の足を引っ張るだけであり、政府や…