Heinz J. Rothe「Lattice Gauge Theories: An Introduction」☆☆

Lattice Gauge Theories: An Introduction (World Scientific Lecture Notes in Physics)

Lattice Gauge Theories: An Introduction (World Scientific Lecture Notes in Physics)

格子ゲージ理論の教科書。
格子理論は無限の発散をもつ場の理論を有限しか扱えないコンピューターで数値計算するために使われる理論である。


またこの理論はそれだけではなく、場の理論を数学的に厳密に構成するための「構成論的場の理論」においても重要な役割を果たす。


この理論は時空を格子状のさいの目に分割してしまう。
そして無限のミンコフスキー時空を有限のユークリッド空間の中に押し込める。
実に興味深いモデルである。数値計算にだけ使うにはもったいない。


ここで注意を一つ。
格子ゲージ理論では近年ルッシャーによる大きな発展があった。
古い版の教科書ではその重要な発見について書いていない。
もし格子ゲージ理論を学ぶのならば新しいものを買うことをお勧めする。


(補足)
フェルミオンを格子モデルにのせると自由度を本来の倍数えてしまうというダブリング問題が生じる。
これを解決するには理論が持つべきカイラル対称性を必ず破ってしまうことがニールセン・二ノ宮の不能定理で知られていた。


しかしルッシャーはギンスパーグ・ウィルソンの関係式を満たすフェルミオン場を導入することでカイラル対称性を満足したままダブリング問題を解決できることを示したのであった。


これにより格子ゲージ理論フェルミオンも含めた場の理論について、より正確な数値シュミレーションを実行することが可能になった。


ああ、なんと素晴らしい大躍進か!
しかし今この場で私一人だけが盛り上がっているようなのは気のせいだろうか?