死の勝利

人は「その時」が来るまで「その時」のことを考えない。
それは高確率で起きるのに、そのことを考えない。


パンデミックはある日突然始まる。
それは新型ウィルスの世界規模の爆発的感染である。


昨年末に鳥インフルエンザの人から人への感染がパキスタンで確認された。
今後、このウイルスはWHO基準のフェーズ3(鳥から人感染)からフェーズ4(人から人感染)へ移行することだろう。
パンデミックはフェーズ6。確実にその段階に向けてウィルスは進化している。


現在の鳥インフルエンザの致死率は50%。
人人感染の新型ウィルスが誕生した時、全国民の50%が感染。
その三分の一以上の3000万人が発症すると予想されている。
計算によるとアメリカではパンでミック発生後わずか60日で全国民の33%が感染すると試算されている。
日本は国土が狭いので、はるかに短い期間で全国に広がることだろう。


ウィルスは宿主がすぐに死ぬと増殖できないので、感染力の強化とともに致死率は低下するものと予想される。
だから希望的観測により致死率が3%まで下がると仮定すれば、日本国内の死者は「たったの90万人」ですむ。
3%まで下がってくれなかったときは、死の勝利の再来が待っている。


だが被害はそれだけで終わらない。
3000万人の感染者は一切の活動ができず、社会はマヒする。
医療機関は急増する患者に対応できず、流通が停まることで食料は高騰し、焼ききれない数の死者が放置される。
社会秩序は一定期間崩壊することだろう。
強盗、強姦、暴動、殺人が横行するであろう。
身内をなくし、絶望した人間は容易に暴徒に変化する。



この世界規模の災害に対して個人でできる対策は少ないが、手洗い、うがいの徹底と、ワクチンの接種をすること。
流行初期において他人との接触を避けること。(特に子供は早めに学校を休ませる)
保存食や浄水剤(塩素系)を確保すること。
念のために訓練を積んだ自衛の為の小集団を作ること。
せいぜい、その程度しかできることがない。
あとは確率に運命を任せるしかない。



そしてパンデミックは世界経済の構造、その中における日本の地位も変えることだろう。
この鳥インフルエンザの死者は10代と20代に多いという。
ならば日本はただでさえ少ない労働人口の多くを失うことになる。
一方で発展途上国は人口が減ることにより、一人当たりの資本量が増えて今より豊かになることだろう。
中世時代のペストでも、農民がペスト流行後に豊かになるという現象が確認されている。


日本はデフレが終わらないうちに、次の災難に襲われ、立ち直る力を奪われる。
そんな最悪な未来予想図が見える。