老害

「成長、成長と言って物価の安定を破るようなことは許されない」


実家で久しぶりにテレビをつけたとたんに、こんな発言が飛び込んできた。
発言主は民主党元財務事務次官藤井裕久氏。
報道2001という番組で新日銀総裁に武藤氏が選ばれたことに対しての発言である。


藤井氏は他にもこんな発言もしている。

藤井裕久党税調会長も31日の講演で「日銀は通貨価値の安定が大きな仕事。政府や与党と独立した人でなければいけない」と語り、「財金分離」原則を徹底させるように求めた。
asahi.com日銀総裁人事 武藤氏の昇格に民主小委が否定的より引用)


老害である。
日本国民がデフレで塗炭の苦しみを味わっている中、それを更に長引かせようとする人間にそれ以外の呼称は必要ない。
多くの知人の会社が倒産、廃業した。
少なくない数の人が自殺、失踪した。
就業の機会を与えられなかった何人かの旧友が犯罪者やヤクザになった。
それらは個人の責任、自業自得でもあるが、彼らがそうなってしまうのを盛大に後押ししたのはデフレだ。


超有能ならば彼らの会社は倒産しなかっただろう。
老いてなお厳しい肉体労働に耐えられる超人的な身体を持っていれば浮浪者になり、失踪したり野たれ死にしなくてもよかっただろう。
社会に見捨てられ、食うに困り、空腹と未来への絶望の中で自暴自棄にならない鋼の意志を持っていればヤクザにはならなかっただろう。
それは頭がいい人間と、体力に恵まれた人間と、鉄の意志を持った人間だけが生き残れる社会だ。
だが、そんなのは間違っている。普通に無能な私たちが普通の平安を得られる社会を私は望む。そのために必要なのは経済の成長だ。


だから今の日本は成長しなくてはいけない。
そのためにはデフレの阻止を最優先で実行する必要がある。それは物価の安定よりも重要なことだ。


物価の安定を優先することが成長を止めることを知らないのならばただの無知であり罪がない。
政治家なのに無知なのは許されないことではあるが、それは学ぶことで改めることができる。
だが藤井氏ははっきりと「成長のために物価安定を破ることは許さない」と言った。
私たちの苦難の原因を知っていて、なお私たちに苦しめと言うのだ。


量的緩和を危険視する民主党筋がいると聞いたことがあるが、その正体がこの藤井氏らなのだと分かった。
中央銀行の独立性は絶対で、その目的は物価の安定である」というのは迷信でしかない。
その迷信を守るために、善意で人を不幸にする人間は政治家に向いていない。


日本社会 その国民に 味方なし