マクロ経済学

高安秀樹 「経済物理学の発見」

高安秀樹氏「経済物理学の発見」という本を買った。 私は理論物理学を勉強しており、数年前まで繰り込み群や格子ゲージ理論を相転移とからめた研究に取り組んでいた。 (その後私は自分の能力に限界を感じ、実家から戻ってくるように頼まれたこともあり研究…

某一族の衰亡 地方経済の没落と共に

私たち一族はその町を支配していた。 それは昔の話である。 今はもう没落した。 それは地方経済の没落と時を同じくして起きたことであり、会社とはいったい誰のものかという問題でもあった。 私の曽祖父は鍋の販売をしていた頃、ある金属に目をつけてその加…

老害

「成長、成長と言って物価の安定を破るようなことは許されない」 実家で久しぶりにテレビをつけたとたんに、こんな発言が飛び込んできた。 発言主は民主党元財務事務次官の藤井裕久氏。 報道2001という番組で新日銀総裁に武藤氏が選ばれたことに対しての…

文明崩壊(1)の続き 需要と供給はどうすれば向上するのだろうか? まずは供給について考えよう。 供給面の向上なしに長期的な経済成長はありえない。 だがそれをどのように向上させればいいのかは、経済学でもまだよく分かっていないことだ。 ただ大ざっぱ…

人類はいつか必ず絶滅する。 人間がいつか必ず死ぬように、種もまた必ず滅ぶようにできている。 0%の確率についてなんか考えるだけ無駄なことだが、奇跡的な幸運が無量大数回重なって人類が何十億、何百億年先にと存続していたとしても、宇宙の終わりとと…

格差社会の終わらせ方

金融政策とは効率的な所得の再分配政策でもある。 再分配される以上は、利益を得る者と損をする者、勝者と敗者が分かれる。 インフレは資産価値を減らす。デフレはその逆で資産価値が上がる。 それならばデフレの方がいいと思う人もいるかもしれない。 だが…

法則の変わる科学、経済学(飯田泰之「歴史が教えるマネーの理論」)

第一部読了。 以下、そのまとめと感想を。 貨幣数量説は、物価と貨幣の流通量が比例することを予言する。 しかし近代に入ってそれが成立しなくなった。 人々が将来、物価が上がると信じれば本当に物価が上がり、下がると信じれば下がる。 それが現代の物価理…

16世紀価格革命についての疑問(飯田泰之「歴史が教えるマネーの理論」)

先日から飯田泰之氏の「歴史が教えるマネーの理論」を読んでいる。 第一部は「貨幣数量説の栄光と挫折」と銘打ち、貨幣の流通量と物価の歴史を実例を挙げて紹介している。 最初の話は「原始的な貨幣数量説」の紹介である。 それは「物価がマネーの量に比例す…

貿易その2「歴史に見る国際競争力主義者の行動」(参考文献:野口旭「経済対立は誰が起こすのか」)

戦略的貿易論。 それは「貿易黒字は善で貿易赤字は悪である」と考える人々が作り出した政策のことである。 90年代の日本は巨額の貿易黒字を抱えていた。 それは不況のせいで国内の消費が停滞し、余った資産が投資として海外に流れた結果にすぎなかった。 …

貿易その1「国際競争力の幻想」

経済政策において、貿易は実は最重要問題ではない。 もちろん貿易は重要ではあるが、どこかのエコノミストように 「日本人は創意工夫して、国際競争力に打ち勝っていかなければならない」 と拳を振り上げるような大げさな問題ではない。 アメリカや日本など…

経済成長は幸福への最短経路であること(旧玄文講再録)

経済において重要な概念は「生産」である。 なぜなら生産性を高めることが国力の増大と国民の福祉に直接つながるからであり、一国の経済力、進歩、生活水準の豊かさは生産力によって測られるからである。 つまり生産性が高まれば景気が良くなり、人々が豊か…

科学とは何か(2)経済学(旧玄文講再録)

以前、私がまだ学生だった頃、研究室の同僚と経済政策について話しているうちに、彼らは 「経済学なんてつまらないよね」 「ノーベル経済学賞なんて要らないものだ」 なんて言い出したことがある。 そして挙げ句には 「世界で一番、純利益を多く出した経営者…

貨幣その4「その因果」(旧玄文講再録)

どうやら市場における貨幣の影響について二つの異なる意見が存在するようである。 それはケイジアンとマネタリストである。 前者は政府や中央銀行は金融政策を通して市場に介入するべきだと考え、 後者は金融政策は景気回復の足を引っ張るだけであり、政府や…

貨幣その3「その制御」(旧玄文講再録)

昨日も書いたように貨幣のコントロールとは、その流通量「マネーサプライ」を増減させることである。 ここでは「誰が(Who)」「どのようにして(How)」それを行うかを考えてみたい。 まずWhoであるが日本を含む多くの国では、これは政府からある程度独立した機…

貨幣その2「その種類」(旧玄文講再録)

貨幣の種類は2つある。 「不換紙幣」と「商品貨幣」である。 「不換紙幣」とは私たちが今日使っている一万円札や千円札のことであり、実質的な価値のない紙切れのことである。 マンガ「北斗の拳」の冒頭で社会制度の崩壊した世界の中でモヒカンの野盗が「金…

貨幣その1「その役割」(旧玄文講再録)

お金というものは不思議である。 あの精巧な印刷がされている紙切れにすぎない物が、実質的な価値を遥かに上回るものとして扱われているのである。 だって千円の原価は14円20銭、5千円の原価は20円20銭、1万円の原価は21円70銭でしかないので…