渡波 郁「CPUの創りかた」

under52008-02-02


学ぶということは迂遠なものだ。
近道をして学んだことは身に付かないことが多い。


本書はCPUを手作りするための指南書であり
その為には1万円弱の予算と50時間ほどの労力が必要だ。
その挙げ句手に入るのは4bit、10Hz、メモリ16バイトの超低性能CPUである。
現代の一般的なCPUは32bit、数百MHz、メモリ256000バイトであることから見れば、お粗末の極みだ。


このCPUの名は「Toriaezu DOUSA-SURU 4bit」略してTD4だ。
名前の通り、とりあえず動作することだけを目的に作られたCPUであり、実質的な価値はない。


それでも、この本を読んだのならば、作らないではいられなかった。
これはゲームと同じだ。
あなたは買ってきたばかりのゲームの説明書だけを読んで、「あー面白かった」と言ってゲームそのものをしないなんてことはないであろう。
これも同じだ。
作らないと読んだことにならない。
人として生まれたからには死ぬまでにCPUの一つでも作らなくてはいけないのだ。


このTD4を作る前には、完成させる自信はなかった。
それでも本書の中の「失敗しないに決まっている物作りなんて、手作り風のテーマパークに過ぎない」という言葉に励まされて毎日少しづつ作り続けた。


ショートさせた。
熱で部品を壊した。
ハンダ付けが弱くて配線が外れた。
間違った部品を取りつけた。


今思えば、失敗の方が価値ある体験だったと分かる。
超低性能なものに多大なるコストと労力をかけたことに後悔はない。
CPUの仕組みを知るだけなら本書を一日で読めば十分だ。お金も時間も大して必要ない。
高性能なCPUなら安価で手に入る。
だが失敗や徒労は、そこからは手に入らない。
この価値ある二者を手にできることこそがTD4を作る意味なのだ。


私はこのTD4を制作してから、何故か仕事が順調に進むようになった。
直接、自分の業務とは関係ない知識しか手にしていないはずなのにである。
まるで身につけているだけで次々と幸運が訪れる神秘のパワーストーン、ラピズラリである。
風呂場で美女と札束に囲まれる日も、そう遠くない話だ。


思うに、これを作ることで私は確実に何かを学んだのだ。言葉に形容しづらい作法のごとき何かを。


このCPUについては以下のサイトが詳しい。
失敗と徒労を手に入れた幸運な人たちの軌跡が多く紹介されている。

CPUの創りかた関連


私は一人でも多くの方が、この幸運を手にすることを望んでいる。
大自然の驚異のエネルギー(電気エネルギー、一部熱エネルギー)を集め、脅威の波動(電磁波)を放出し、あなたを幸運にする神秘の石(半導体)「TD4」を是非お試しあれ!