読書

与那原恵「自殺志願者という物語」☆

もろびとこぞりて―思いの場を歩く作者: 与那原恵出版社/メーカー: 柏書房発売日: 2000/06/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 16回この商品を含むブログ (4件) を見る1998年のことである。ドクターキリコ事件というものがあった。 ネットにおいて自殺志…

冲方 丁 「マルドゥック・スクランブル 」(全3巻)☆☆☆☆

マルドゥック・スクランブル―The Third Exhaust 排気 (ハヤカワ文庫JA)作者: 冲方丁出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2003/07メディア: 文庫購入: 7人 クリック: 69回この商品を含むブログ (284件) を見るマルドゥック・スクランブルは私が勝手にギャンブル…

高安秀樹 「経済物理学の発見」

高安秀樹氏「経済物理学の発見」という本を買った。 私は理論物理学を勉強しており、数年前まで繰り込み群や格子ゲージ理論を相転移とからめた研究に取り組んでいた。 (その後私は自分の能力に限界を感じ、実家から戻ってくるように頼まれたこともあり研究…

米原万理「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」☆☆

嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)作者: 米原万里出版社/メーカー: 角川学芸出版発売日: 2004/06/25メディア: 文庫購入: 27人 クリック: 141回この商品を含むブログ (188件) を見る子供時代の思い出は、何もかもが懐かしい。 特にその時期を共有した…

アントニオ・R. ダマシオの「生存する脳」☆☆

「ロボットの王国」 第三回 アンドロイドサイエンス を引き合いにした「生存する脳」の紹介。生存する脳―心と脳と身体の神秘作者: アントニオ・R.ダマシオ,Antonio R. Damasio,田中三彦出版社/メーカー: 講談社発売日: 2000/01メディア: 単行本購入: 1人 ク…

渡波 郁「CPUの創りかた」

学ぶということは迂遠なものだ。 近道をして学んだことは身に付かないことが多い。 本書はCPUを手作りするための指南書であり その為には1万円弱の予算と50時間ほどの労力が必要だ。 その挙げ句手に入るのは4bit、10Hz、メモリ16バイトの超低性能CPUであ…

米原万里「真夜中の太陽」

「責難は成事にあらず(@十二国記)」 これは、批判しただけで何かをした気になってはいけないということだ。 米原万里さんが亡くなったのは一昨年のことだ。 チェコスロバキアで子供時代を過ごし激動する共産主義国を生きた女性で、 成人してからはロシア…

「戦後日本経済史」という本を読んだ。 金融政策の重要性を無視した内容の本で、その主張にはとても同意できそうにない。 著者は現在の不況の原因を1940年体制という戦時中から続く日本の経済構造にあると主張する。 だが読んでいても次から次へと小話が…

文明崩壊(1)の続き 需要と供給はどうすれば向上するのだろうか? まずは供給について考えよう。 供給面の向上なしに長期的な経済成長はありえない。 だがそれをどのように向上させればいいのかは、経済学でもまだよく分かっていないことだ。 ただ大ざっぱ…

人類はいつか必ず絶滅する。 人間がいつか必ず死ぬように、種もまた必ず滅ぶようにできている。 0%の確率についてなんか考えるだけ無駄なことだが、奇跡的な幸運が無量大数回重なって人類が何十億、何百億年先にと存続していたとしても、宇宙の終わりとと…

法則の変わる科学、経済学(飯田泰之「歴史が教えるマネーの理論」)

第一部読了。 以下、そのまとめと感想を。 貨幣数量説は、物価と貨幣の流通量が比例することを予言する。 しかし近代に入ってそれが成立しなくなった。 人々が将来、物価が上がると信じれば本当に物価が上がり、下がると信じれば下がる。 それが現代の物価理…

16世紀価格革命についての疑問(飯田泰之「歴史が教えるマネーの理論」)

先日から飯田泰之氏の「歴史が教えるマネーの理論」を読んでいる。 第一部は「貨幣数量説の栄光と挫折」と銘打ち、貨幣の流通量と物価の歴史を実例を挙げて紹介している。 最初の話は「原始的な貨幣数量説」の紹介である。 それは「物価がマネーの量に比例す…

「社会生物学論争史」

これは「社会生物学」にまつわる論争を追いかけた本である。 しかし本書はそれだけについての本ではない。 「科学とは何か?」 「自分の知る科学が別の人間にとっての科学とはまるで異なるとき、一体どんな論争が起きるのか?」 「実験科学者とナチュラリス…

冲方丁「マルドゥック・ヴェロシティ」

マルドゥック・スクランブルの前日潭。 前作の強大な敵ボイルドが主人公で、彼がフォースの暗黒面に落ちるまでの物語。 二巻まで読んだが、三巻はほとんどの登場人物が死ぬハードな展開が予想される。 前作の主人公の兄と思われる人物が出てきたり、 後にウ…

ブローデル「物質文明・経済・資本主義」14-19世紀までの世界の人口(旧玄文講再録)

現在、地球の人口は64億6400万人だとされている。 インドには人としてカウントされない統計外の低カースト層の人間がいて、実は彼らを含めるとインド人の人口は既に中国を越しているのではないかとも言われている。 インドに限らず戸籍に登録されない…

川勝義雄「中国の歴史3 魏晋南北朝」

戦争が終わらない世界。 それは生まれる前からあり、死んだ後にも続き、 祖父の祖父の代から孫の孫の代まで繰り返される。 そんな時代に生まれてしまった者たちはどうやって生きていけばいいのだろうか。 魏晋南北朝時代とはそんな時代であった。 それは西暦…

清水美和「中国農民の反乱」(旧玄文講再録)

中国が抱える問題の中に「三農問題」と「貧富の格差」がある。 この2つは似たような問題であり、その問題点とは農民の収入がまるで上がらず、沿岸部の工業地域が豊かになる一方で農民は日々ひたすら貧しくなっているということである。 この事情を知りたく…

貿易その2「歴史に見る国際競争力主義者の行動」(参考文献:野口旭「経済対立は誰が起こすのか」)

戦略的貿易論。 それは「貿易黒字は善で貿易赤字は悪である」と考える人々が作り出した政策のことである。 90年代の日本は巨額の貿易黒字を抱えていた。 それは不況のせいで国内の消費が停滞し、余った資産が投資として海外に流れた結果にすぎなかった。 …

宮崎市定「雍正帝(ようせいてい)」

雍正帝は最良の独裁政治を行い、それゆえに独裁政治の限界を示すことになった中国清王朝の皇帝である。 彼は皇太子たちとの政権闘争の果て1722年に皇帝になると、反目する兄弟に「豚」と「犬」という名を与えて独裁君主となった。 そしてこれより彼の手…